里親の資質

ヒト日記 Returns
まじめな駄文

ヒト日記リターンズ「里親の資質」

保健所に持ち込まれ収容された犬猫を引き取って里親を探す、という保護団体の行動は素晴らしいと思う。お金も労力も必要だし、とても大変なことだと簡単に察しがつく。そういう現場を見ているからこそ、無責任な飼い主が許せない気持ちが強いのも理解できる。悲しい思いをした犬猫を今度こそしあわせにしてあげたいって気持ちは痛いほどわかる。

でもね。

里親募集サイトを見ると、なんだかとってもイヤな気持ちになることが多い。

なぜか。

譲渡条件の記載の仕方がどこのサイトも異様に厳しいのだ。条件が厳しいわけではない。求めていることは至極当然のことばかり。終生飼育。室内飼い。ワクチン接種。病気の予防、治療。

言いたいことはわかるけど、無責任な飼い主が憎いのもわかるけど、犬猫のしあわせを望むのもわかるけど、なんでそんな「ひとを見たら泥棒と思え」的な、里親を名乗り出るひとを最初から「無責任なひと」だと決めてかかったような物言いをするんだろう。

そんなつもりはない?いやいや、充分威圧的で「我々こそが正義!」と言わんばかりですよ気付いてないだけで。

身分証明書の提示をしていただきます。
ご自宅に伺い飼育環境を確認させていただきます。
適性を判断させていただきます。

アンタらナニサマなんだ。もう少し柔らかい表現はできないのだろうか。表現の仕方ひとつで、もっとたくさんの不幸な犬猫を救えると思うんだが。

里親を名乗り出るひとのなかには、そりゃ賢くないひともいるだろう。タダだからラッキーってな感覚で安易に引き取ろうとするひともいるだろう。転売目的の業者を警戒する必要もあるだろう。でも里親募集サイトをわざわざ検索して見るひとってのは、大概あなた方と同じように不幸な命を救いたいと思っている善意のひとではあるまいか。

収容された犬猫は有志の保護団体に引き取られ、体調のチェック、性格や気質の判断の下、譲渡できそうなら有志の一時預かり宅で世話をしつつ、Webサイトでの募集や譲渡会などを通じて里親が現れるのを待つ。一時預かり宅にはすでに先住の犬猫がいるため正式に引き取れない家庭が多い。引き取れる状況であれば引き取っているだろう。

保護団体は飼育環境を持っていない、もしくは持っていても世話ができる数に限りがあるため、溢れた犬猫を里親が見つかるまで一時預かり宅に預けるわけだ。

 

……それも充分無責任と言える行動では?

収容所から引き取る段階では、その犬猫の飼い主(里親)はまだ見つかってもいない状況なわけだ。それなのに「なんとかする」という根性論で以って引き取ってしまう。そのあと一時預かり宅を確保し、里親を募集し、譲渡会などを開き、めでたく里親が現れ…

現れなかったらどうするんだ。ずっと一時預かり宅で面倒みるのか(実際そういう犬猫も多い)(一時預かり宅で2年も3年も過ごす場合もある)(もうそこまでくればアンタが引き取ったらどうだ)。

 

里親の名乗りを挙げるひとの中にも、とにかく命を救いたいからと、多少無理をすればなんとかなるだろうと、なんとかしようと、なんの確証も提示できないけれどしあわせにするという約束はできる、ってひとは大勢いるんじゃないだろうか。

それを、威圧的な条件提示によって失っていると思う。

それは、しあわせになる犬猫の数を減らすことにつながっているとさえ思う。犬猫のしあわせを決めるのは保護団体ではない。本当にひとつでも多くの命を救いたいと思うのであれば、保護団体にももう少し謙虚な気持ちが必要なのではないかと、里親募集サイトを見ながら思った。

 

※ 2020年11月25日追記:里親の名乗りを挙げるひとの中には、転売目的や虐待目的(!)などのけしからんヤカラがいることも事実で、それを警戒する保護団体の姿勢そのものに関しては同意する気持ちしかありませんし、むしろ何の確認もせずホイホイ譲渡してしまう保護団体があるとしたら当然そちらのほうが問題だと思います。ただ、条件はそのままに文面だけをもう少し工夫すればもっと多くの方が名乗りを挙げやすい(少なくともわたくしは挙げやすい)のではないかなと感じることが多々あったことは事実です。最近は収容所などから引き取ったあとクラウドファンディングを利用する個人の保護活動家もおられますが、わたくし個人としてはこのやり方には少しばかり疑問を持っております。最初からクラファンに頼らなくてはいけない経済力で、仮にクラファンでの支援がまったくなかった場合どうするつもりなんだよ、という点がひとつ。もうひとつは、この先永遠にクラファン頼みで活動続けるつもりかよ、もしのっぴきならない理由で一度に大勢の諭吉が必要になったときどうするつもりなんだよ、という点。保護活動の基本は慈善活動(ボランティア)であり営利目的ではないはずなので、潤沢とは行かずともある程度の経済力がなければ手を出してはいけないのではないかと考えます。オレは。